段付き部品の粉体プレス成形は段差ごとの密度差が課題です。多段成形の仕組みと成形機の選び方を解説します。
多段成形とは、上下のパンチを段差ごとに分割し、それぞれの動きを制御しながら段付き形状の圧粉体を一度のプレスで成形する方法です。粉体プレス成形は、金属やセラミックスの粉末を金型に入れて圧縮・成形する工法で、粉末冶金では金型を用いたプレス成形が主流です。
単軸圧縮では、凹凸のある段付き端面を下パンチで、平坦面を上パンチで成形するのが基本です。両端面に大きな凹凸がある場合は上パンチを2本に分割し、「上2段下2段」や「上2段下3段」の成形法を適用します。
粉末は液体のように流れないため、成形時に高さ方向の密度差が生じやすく、部分的な強度のばらつきや重心のずれにつながります。厚みの異なる部分を1本のパンチでまとめて押すと、部位ごとの圧縮量を合わせにくくなります。そのため、段付き部品では段ごとにパンチを分けて圧縮量を調整します。
参照元:Google Patents「JP2855137B2 段付き圧粉体の成形方法」
(https://patents.google.com/patent/JP2855137B2/ja)
参照元:Mitsuri Media「【粉末冶金】徹底解説!加工工程・材料・メリットデメリットは?」
(https://mitsu-ri.net/articles/powder-metallurgy)
段付き部品で起こりやすい課題の一つが、段差ごとの密度ムラです。各段の加圧中心(ニュートラルライン)がそろっていないと、成形体に歪みや密度の偏りが生じます。また、ある時点で段ごとの加圧比が異なると、加圧比の大きい部分の粉末が小さい部分へ流れ込み、圧縮むらの原因になります。
段付き面の反対側に突起部がある形状では、上パンチを2本にしても突起部周辺の圧粉密度が他の部分より低くなりがちです。この密度差は焼結時の変形や、強度が求められる部品での強度不足につながります。
参照元:Google Patents「JP3966373B2 段付き形状粉体成形方法及び段付き形状粉体成形装置」
(https://patents.google.com/patent/JP3966373B2/ja)
参照元:Google Patents「JP2855137B2 段付き圧粉体の成形方法」
(https://patents.google.com/patent/JP2855137B2/ja)
薄肉の張り出し部を上パンチの突起部で押し込む金型構成では、必要量の数倍の粉末が狭い範囲で圧縮されます。圧粉工程では最大8トン/cm²程度の圧力がかかるため、局部的に密度が高まるとプレス荷重が集中し、1個目の成形が終わる前に突起部が折損することがあります。
段付きダイで薄肉の張り出し部を成形する場合、圧縮方向の厚みが0.5mm未満だと、隣のキャビティから粉末が横方向に流れ込みます。その結果、密度が急に変わる部分で割れが生じやすくなります。
流れ込み対策として、油圧シリンダを組み込んでフロートパンチの保持力を高める方法があります。ただしリリーフ圧設定による管理では粉末移動を完全には制御できないため、厳密に制御したい場合は加圧終了付近までCNCで制御するのが望ましい方法です。
参照元:Google Patents「JP2855137B2 段付き圧粉体の成形方法」
(https://patents.google.com/patent/JP2855137B2/ja)
参照元:日本粉末冶金工業会「プレス機」
(https://www.jpma.gr.jp/technology/press/)
「上○段下○段」は、上下それぞれに何本のパンチを使うかを示す呼び方です。たとえば上1段下3段成形法は、上パンチ1本・下パンチ3本・コアロッド1本で粉末を加圧します。反対面にも突起がある形状では、上パンチ2本・下パンチ3本・コアロッド1本の上2段下3段成形法を用います。
多段式の成形装置では、ダイと複数の上パンチに加え、外周・中間・内周に配置した複数の下パンチとコアロッドで成形体をつくります。各下パンチごとに駆動用のシリンダと荷重を支える位置決めシリンダを設けた構成もあり、段数が増えるほど各パンチを個別に動かす機構が必要になります。
参照元:Google Patents「JP2855137B2 段付き圧粉体の成形方法」
(https://patents.google.com/patent/JP2855137B2/ja)
参照元:Google Patents「JP2005297002A 多段式粉末成形プレス装置」
(https://patents.google.com/patent/JP2005297002A/ja)
密度を均一にするには、加圧前に各段の粉末を圧縮開始位置まで移送し、そのうえで各軸の圧縮速度比を一定に保つことが重要です。速度比が一定であれば段ごとの加圧比に差が出ず、粉末の流れ込みを防いで成形体の密度をそろえられます。さらに各段のニュートラルラインを1つの水平ライン上に統一すると、歪みや密度の偏りを抑えられます。CNC制御の多段プレスなら、分割金型ごとにニュートラルラインを調整することも可能です。
粉末移動工程では、下パンチを上パンチと同じ速度で下降させることで、粉末の上面と下面を同時に移動させます。
参照元:Google Patents「JP3966373B2 段付き形状粉体成形方法及び段付き形状粉体成形装置」
(https://patents.google.com/patent/JP3966373B2/ja)
参照元:Google Patents「JP2005297002A 多段式粉末成形プレス装置」
(https://patents.google.com/patent/JP2005297002A/ja)
ウィズドロアル方式(強制引き下げ法)は、下パンチを固定したまま、上パンチの加圧開始と同時にダイを強制的に引き下げる成形法です。上パンチだけで押す片押し法に比べ、加圧軸方向の密度差が半分になり、両押し法と同等の効果が得られます。
ダイを動かすダイフロート方式では、任意の1軸の下パンチを固定軸として各軸の移動量を決めます。ダイ固定方式の場合はダイの移動量をゼロとして計算します。
参照元:ZENFormer lab「ウィズドロアル方式の粉体成形」
(https://www.zenformerlab.com/case/?id=1660783797-647593)
参照元:Google Patents「JP3966373B2 段付き形状粉体成形方法及び段付き形状粉体成形装置」
(https://patents.google.com/patent/JP3966373B2/ja)
複雑な形状ではプレス本体の動作だけでは足りないため、金型と補助作動機構を一体化した「ダイセット(ツールセット)」をプレスに装着して成形します。
対応できる段数は機種によって大きく異なります。単純形状向けの高速機では上1段下2段まで、汎用機ではフレームを延長する仕様で上2段下3段のコア段付き成形まで対応する例があります。ダイセット交換方式で多段成形用ダイセットを取り付けられる機種もあるため、成形したい部品の段数と照らし合わせて確認しましょう。
段取り替えの頻度が高い場合は金型交換のしやすさも重要です。上下一段成形用ではクイック交換対応のツールセットがありますが、多段成形用は専用化によって実現する形になります。エアの給気ブロックや油圧のオートカプラーで接続作業を減らす方法もあります。
参照元:株式会社富士精機製作所「ダイセットについて」
(https://fss.biz/dieset/)
参照元:イプロス「成形プレス - メーカー・企業と製品の一覧」
(https://www.ipros.com/cg2/%E6%88%90%E5%BD%A2%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9/)
参照元:日本粉末冶金工業会「プレス機」
(https://www.jpma.gr.jp/technology/press/)
多段プレスの制御方式は、大きくバランス機構方式とCNC方式に分かれます。バランス機構方式は、上下1軸ずつの主圧力に対し、他の分割金型の動きをエア圧・バネ・油圧で調整します。動作が不安定になりやすく、原料や型が変わるたびに先行試験が必要で、熟練者による調整にも頼りがちです。一方、CNC多段プレスは充填・移送・加圧の各動作を数値で確実に定義できるため、バランス調整が不要です。(※各動作の位置を事前に正確に決める必要があり、その設定は成形の知識と経験が求められます。)
ACサーボモーターとボールスクリューで駆動し、上3軸・下3軸の最大6軸を独立制御できる機種では、多段成形用金型を駆動して従来は複数工程が必要だった複雑形状を一度で成形し、後加工の削減につなげています。
参照元:Google Patents「JP3966373B2 段付き形状粉体成形方法及び段付き形状粉体成形装置」
(https://patents.google.com/patent/JP3966373B2/ja)
参照元:イプロスものづくり
(https://mono.ipros.com/product/detail/2000018390/)
多段形状品のクラック対策では、荷重を「総荷重」だけでなく「パンチごと」に把握できるかが判断基準になります。各プレートや金型アダプタにロードセルを組み込めば、パンチごとの荷重測定が可能です。各プレートの圧力を検知して設定範囲外で停止させる機能は一部のCNCプレスで実績がありますが、精度面にはまだ限界があります。
抜き出し時の割れにも注意が必要です。CNCプレスであれば、各パンチの抜き出し順番や速度を変更し、最適な抜出方法を設定できます。導入時は、荷重監視と抜出制御の両方に対応しているかを確認しましょう。
参照元:日本粉末冶金工業会「プレス機」
(https://www.jpma.gr.jp/technology/press/)
多段成形は、段差ごとにパンチを分割し、粉末の移送と圧縮速度比をそろえて段付き部品の密度を均一にする成形法です。
成形機を選ぶ際は、対応段数とダイセット構成、各軸を独立制御できるか、パンチごとの荷重監視や抜出制御があるかの3点を、成形したい部品の形状と照らし合わせて確認しましょう。
引用元HP:三庄インダストリー公式HP
(https://www.sanshoindy.com/)
引用元HP:小林工業公式HP
(https://www.kobayashi-akita.co.jp/)
引用元HP:大伸機工公式HP
(https://daishin-kikou.com/)