粉末成形の「一軸成形」と「両軸成形」は、加圧方向の違いが密度分布や焼結後の品質を大きく左右します。両者の仕組みと使い分けをわかりやすく解説します。
粉末成形は、金属やセラミックスなどの粉末を金型に充填し、加圧して固める成形方法です。このとき「どの方向から加圧するか」によって、一般的に「一軸成形(片押し法)」と「両軸成形(両押し法)」の2つに分けられます。両者の最も重要な違いは、成形体内部に生じる密度分布のムラです。まずはそれぞれの方式の仕組みを整理していきましょう。
一軸成形(片押し法)とは、下パンチを固定したまま、上パンチの加圧力だけで粉末を成形する方法です。金型を用いた粉末成形の中で最も基本的な方式にあたります。
この方法では、粉末を充填したダイ(雌型)の壁面との摩擦が影響し、成形体内部の応力状態が不均一になります。その結果、加圧側に近い成形品の上部は密度が高く、下部は密度が低くなるという密度差が生じます。密度差が大きいと、焼成(焼結)後に変形やクラックが発生する原因となるため、注意が必要です。
構造がシンプルで扱いやすい一方、この上下方向の密度ムラが一軸成形の課題といえます。
両軸成形(両押し法)とは、上パンチと下パンチの両方を使い、粉末を上下から加圧して成形する方法です。上下から均等に荷重がかかるため、一軸成形に比べて上下方向の密度分布差が小さい成形体を得られる点が最大の特徴です。
粉末を金型で成形する場合、この両軸成形が採用されることが多くあります。理由は粉末を一方向からのみ加圧すると、ダイ内壁との摩擦によって粉体内の圧力に差が生じ、成形体の密度を均一に保つのが難しくなるためです。上下から同時に加圧することで密度ムラを抑え、焼結時のクラックなどのリスクを低減できます。
一軸成形と両軸成形の決定的な違いは「成形体内部の密度分布」にあります。一軸成形では、加圧する上パンチに近い上部の密度が高く、固定された下パンチ側の下部にいくほど密度が低くなります。これは、加圧力がダイ壁面との摩擦によって下方へ伝わるにつれて減衰していくためで、片押しである以上、原理的に避けにくい現象です。
一方、両軸成形では上下の両方向から荷重をかけるため、成形体の中央付近に密度が低い領域が残るものの、上下の密度差そのものは大幅に小さくなります。摩擦の影響が上下対称に分散されることで、一軸成形よりも均一性の高い成形体が得られるのです。この密度分布の違いこそが、焼結後の品質を左右する要点となります。
成形体の密度を均一に保つことが重要なのは、密度のムラが焼結工程での不良に直結するためです。粉末成形品は、成形後に高温で焼き固める「焼結」を経て最終製品となりますが、この焼結の際、成形体は密度に応じて収縮します。
密度が不均一な成形体では、部位ごとに収縮量が異なるため、焼結時に変形やクラック(割れ)が発生しやすくなります。上下から同時に加圧する両軸成形は、この密度ムラを抑えることで、こうした焼結不良のリスクを低減できるわけです。
また、金型プレス成形では、粉体と金型壁面のブリッジ現象による圧力損失や不均一な圧力伝達によって密度の不均質化が起こり、特に長尺の圧粉体ではラミネーション(層状の剥離)や欠けが発生しやすい点にも注意が必要です。密度の均一化は、単なる品質向上策ではなく、歩留まりを左右する重要な工程管理項目といえます。
フローティングダイは両軸成形を実現する代表的な方式の一つです。これは、ダイを固定せず、浮いた(フローティングした)状態にすることで、成形中の粉体の動きに合わせてダイ自体が上下に動く仕組みです。
具体的には、下パンチを固定した状態で上パンチから加圧すると、ダイ壁と粉末の間の摩擦力が増大します。この摩擦力がダイを支える力を上回ると、ダイが下降します。ダイが下がることは、相対的に見れば下パンチが上昇したのと同じであり、結果として上下から加圧する両軸成形と同様の効果が得られるのです。
ダイを浮かせる方法にはバネや油圧で支える方式のほか、ダイの下にスペーサーをセットしておき、仮成形で粉体の内部圧力を高めてから外すことでフローティング状態を作る方式もあります。フローティングによって顆粒から顆粒へ、力の伝わり方のロスは減り、より密度の高い成形体を得られる点もメリットです。
粉末成形には金型プレス成形(一軸・両軸)以外にもさまざまな方法があり、製品の形状や生産量に応じて使い分けられます。ここでは、金型プレス成形が適する製品と、他の成形法との違いを整理します。
金型を用いた一軸加圧成形法(金型プレス成形法)は、粉末成形の中で最も多く利用されている方法です。タイル、陶磁器、耐火レンガ、電気用磁器などの製造に使用され、一般に形状が正確で収縮も小さく、緻密で熱間強度が高い成形体が得られる特徴があります。
特に肉薄品や小型製品の成形に適しており、量産性にも優れています。逆に、長尺品や大型・肉厚品では密度の不均質化やラミネーションのリスクが高まるため、後述する他の成形法が検討されることになります。
金型プレス成形の弱点を抜本的に改良する方法が、アイソスタティック成形法(等方圧成形/isostatic press)です。これはパスカルの原理に基づき、静水圧によってあらゆる方向から均等に粉末を圧縮する方法で、密度の不均質化を大きく改善できます。金型プレス成形法が肉薄品や小型製品に適するのに対し、アイソスタティック成形法は大型製品や長尺製品の成形に適しているという使い分けが基本です。
このほか、粉末成形にはプレス成形以外にも、泥状のスラリーを型に流し込む鋳込成形、口金から押し出して柱状・パイプ状に成形する押出成形、溶融したコンパウンドを金型に射出する射出成形などがあります。薄肉中空品なら鋳込成形、長尺品なら押出成形、複雑形状で高い寸法精度が必要なら射出成形といったように、製品形状に応じた選択が求められます。
参照元:一般社団法人粉体工学会 powderpedia(https://www.sptj.jp/powderpedia/words/12115/)
一軸成形と両軸成形の違いは、加圧方向にあり、それが成形体の密度分布を大きく左右します。片押しの一軸成形は上下に密度差が出やすく、両押しの両軸成形はフローティングダイの活用により密度を均一化できます。密度の均一性は焼結後の変形・クラックを防ぐ鍵です。製品の形状や生産量も踏まえ、最適な成形方法を選定しましょう。
引用元HP:三庄インダストリー公式HP
(http://www.sanshoindy.com/)
引用元HP:小林工業公式HP
(https://www.kobayashi-akita.co.jp/)
引用元HP:大伸機工公式HP
(https://daishin-kikou.com/)