圧粉体の密度は焼結後の品質を左右する重要指標です。ムラの原因と成形機での制御方法を解説します。
圧粉体とは、金属粉末を金型に充填し、プレス機で圧縮成形した「グリーンコンパクト」と呼ばれる中間製品のことです。粉末冶金の工程では、原料粉末を混錬したのちにプレス成形し、その後に融点以下の温度で焼結して最終製品にします。
この成形段階で得られる圧粉体の密度(多くは真密度に対する比率=相対密度で表現)は、粉末粒子同士の接触面積と空隙量を示す指標であり、粉末冶金製品の品質を評価する最初の基準となります。
圧粉体の密度は、そのまま焼結後の強度・磁気特性・寸法精度に直結します。圧縮成形法のなかでも爆薬による衝撃圧縮では条件次第で理論密度の95%以上のかさ密度を持つ圧粉体が得られますが、通常の一軸加圧では、粉末と金型壁面との摩擦などに起因して成形体内密度が不均質化しやすく、長尺の圧粉体においてはラミネーション(層状の割れ)や欠けといった問題が発生しやすい点に注意が必要です。
密度ムラが残ったまま焼結すれば、収縮差により歪みやクラックが生じ、寸法精度の低下や強度不足を招きます。
参照元:粉体工学用語辞典 圧縮成形(https://www.sptj.jp/powderpedia/words/10023/)
一軸加圧で成形する場合、粉体と金型壁面との摩擦により「ブリッジ現象」が生じ、圧力損失が発生します。その結果、パンチから加えた力が粉末全体に均一に伝わらず、加圧面から遠ざかるほど伝わる圧力が減衰していきます。
この軸方向の圧力減衰によって成形体内に密度勾配が生じ、長尺の圧粉体ではラミネーションや欠けの直接的な原因となります。
密度ムラは加圧工程だけでなく、その前段の「金型への粉末充填」段階でも生じます。原料の粒度分布や見掛密度が変化すると、キャビティ内での充填量にバラツキが出て、成形時の重量や密度が安定しません。
この対策として、プレス機側には充填フィードバック機能(成形圧力や重量測定結果からパンチの充填深さを自動調整する機能)や、フィーダボックスをサーボ制御して充填条件を可変にする仕組みが用意されています。
一軸加圧、特に上パンチだけで圧縮する片押し成形では、加圧面に近い上部の密度が高く、下部にいくほど密度が低くなる傾向があります。これは前述の壁面摩擦による圧力損失が加圧方向に沿って累積するためで、長尺の圧粉体ほど上下差が顕在化しやすくなります。
この密度差が原因で焼結後にラミネーションや反り、寸法不良が生じるため、成形高さに対する外径比の設計や成形方式の選定が重要です。
一軸加圧の上下密度差を抑える基本策は、上下パンチから同時に加圧する両軸成形の採用です。さらに均質性を追求するなら、静水圧により無限多軸的な方向から圧縮するアイソスタティック成形(冷間静水圧プレス/CIP)が有効で、均質で高密度の成形体が得られます。
全方向から均一に圧力がかかるため収縮率も安定し、複雑形状や大型部品でも密度勾配が発生しにくく、焼結後の寸法精度も向上します。製品形状と要求密度に応じて成形方式を選び分けることが重要です。
加圧条件を最適化しても、粉体側の流動性と充填性が悪ければ密度は安定しません。セラミックスや金属粉の成形では顆粒を用いることが多く、要求される条件として以下が挙げられます。
原料設計と成形条件を一体で管理することが、密度均一化の前提となります。
密度を安定させる決め手は、面圧と充填量の「数値管理」です。CNCプレスであれば原料の見掛密度を入力するだけで各パンチの適正な充填量を自動計算でき、汎用機でも計算ソフトの追加で対応可能です。
また、各プレートや金型アダプタにロードセルを組み込めば総荷重だけでなく各パンチの荷重を個別に測定でき、面圧のバラツキを可視化できます。
サーボ制御のフィーダボックスと組み合わせれば、面積の大きな成形体でも固体内の充填バラツキを改善しやすく、品質向上にもつながるでしょう。
「密度を上げたければ面圧を高くすればよい」というのは、現場でよく起こる誤解です。確かに面圧上昇に伴い相対密度は上昇しますが、高い面圧での圧縮成形は金型への負荷を大きくし、金型寿命の低下を招きます。
また、金属粉末は再配列による充填が進んだのちに塑性変形によって高密度化しますが、加工硬化が進行すると変形抵抗が上昇し、それ以上面圧を高めても密度向上の伸びは鈍化します。
Fe-6.5Siのような高硬度粉末では、室温成形で理論密度に近づけることが難しく、加工温度を上げて変形抵抗を下げる温間成形などの工夫が必要。単純な面圧上昇ではなく、材種特性と成形温度、面圧を組み合わせた最適化が求められるのです。
参照元:大同特殊鋼 電気製鋼 第91巻1号 Fe-Si系粉末の圧粉成形挙動におよぼす成形温度と面圧の影響[※PDF](https://www.daido.co.jp/common/pdf/pages/technology/journal/91_1/08_technicaldata04_tsuji.pdf)
圧粉体の密度は焼結後の強度・磁気特性・寸法精度を左右する重要指標であり、金型壁面との摩擦、粉体の流動性、一軸成形での上下差など多面的な要因で密度ムラが生じます。
両軸成形やアイソスタティック成形の採用、原料側の流動性・充填性の改善、CNC・サーボ制御による面圧と充填の数値管理を組み合わせ、面圧の安易な上昇に頼らない密度コントロールを設計段階から検討することが重要です。
引用元HP:三庄インダストリー公式HP
(https://www.sanshoindy.com/)
引用元HP:小林工業公式HP
(https://www.kobayashi-akita.co.jp/)
引用元HP:大伸機工公式HP
(https://daishin-kikou.com/)